08/08

EQCを選ぶべき、
これだけの理由

EQCに約半年乗った
専門誌記者が徹底解説

「初めて電気自動車の所有を検討するのであれば、EQCは間違いなくトップレベルの候補としておすすめできる」──そう語るのは、自動車専門誌『CAR GRAPHIC(カーグラフィック)』で編集記者を務める別宮賢治さん。半年間にわたってあらゆる側面からEQCを検証してきた別宮さんに、メルセデスの電気自動車・EQCの魅力について存分に語っていただいた模様をお届けしよう。

※画像と動画は一部日本仕様とは異なります。

別宮賢治

株式会社カーグラフィック

1995年、千葉県生まれ。1962年創刊の自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に所属する編集記者。同誌にてEQCの6ヵ月におよぶテスト記事連載を担当し、およそ半年間で1万7400kmを走行する。「日本でもっとも長くEQCに乗った男」とも噂されている。

ファーストインプレッション ~保守性と革新性をちょうどよいバランスで両立~

── 別宮さんは「日本でいちばん長くEQCをテストした」方だとうかがっております。

別宮 そうかもしれません(笑)。『カーグラフィック』誌で足かけ半年間、EQCのテストを担当し、毎月リポート記事を連載していました。その間、ほぼ毎日のようにEQCのハンドルを握っていましたね。走行距離は半年で1万7400kmに達しました。ストップ・アンド・ゴーを繰り返す日常の街乗りから高速走行中心のロングドライブまで、さまざまな場面で走りましたよ。なかでももっとも長距離だったのは、東京から本州最南端の鹿児島県佐多岬まで往復したことでしょうか。そのときは、4日間で3200km走りました。

── ということは、日本でもっともEQCについて熟知した自動車専門誌記者ということですね。

別宮 どうでしょう。ただ、EQCのいろいろな面を体験してきたとは思います。本音をいえば、もっと乗り続けたかった。もともと半年という期間は決まっていたので仕方なかったのですが、別れの瞬間には思わずウルッとしてしまうほど、EQCに愛着を抱いていました。それくらい、魅力的なクルマであったことは間違いないです。

── そんなEQCとの出会いからうかがいたいのですが、最初の印象は?

別宮 EQCを初めて見たのは、2018年のパリサロン(モンディアル・ド・ロトモビル:フランス・パリで行われている国際自動車見本市)だったんです。そのときは率直なところ「あまり電気自動車っぽくないな」「パッと見たところGLCみたいで、わりと無難な感じだな」という印象を抱きました。

ただ、これは決して悪い意味ではありません。現在、世界中のメーカーがさまざまな電気自動車を手がけるようになり、ユーザーの選択肢が増えてきているのはご承知のとおりです。

電気自動車は、従来の内燃機関を積んだクルマとは趣きを異にする存在ですから、従来のクルマでは実現できなかったような造形を採り入れるなど、特別感のある内外装で仕立てられているモデルも少なくありません。ただ、EQCはあえてそうした方向性は採らなかったのだと解釈しています。

── 従来型のクルマに乗っていた方でも、すんなりと電気自動車に移行できるようなパッケージングということでしょうか。

別宮 そうですね。とはいえ、細部の造形や機構を細かく見ていくと、そこかしこでちゃんと先進性みたいなものがアピールされている。よい意味で奇をてらわず、かといって無難一辺倒でもない。デザイン的にも、技術的にも、保守性と革新性をちょうどいいバランスで両立させているのがEQCの妙味なのだと思います。それってまさに、メルセデスの自動車全般にもいえる特徴のひとつですから、EQCは極めてメルセデスらしい電気自動車といえるかもしれません。

走り ~パワフル、だけど扱いやすい“クセのない”クルマ~

── EQCの「走り」について詳しくうかがっていきたいのですが、まず街中で走ったときの印象はいかがですか?

別宮 ひと言で“日常の街乗り”といっても、シチュエーションはさまざまです。幹線道路を走る場面もあれば、狭い路地に入っていく場面もある。駐車ひとつとっても、近隣への配慮が必要な家の駐車場、窮屈なコインパーキング、他のクルマや人の行き来が多いスーパーやショッピングモールの駐車場など、場所により要点も異なります。ただ、どんな状況下でも言えるのは「EQCはとても扱いやすい」ということ。

ミドルサイズSUVのボディで車幅も1925mmありますから、最初はそれなりのサイズ感を覚えるかもしれません。ただ、あの車格で最小回転半径は5.6mに抑えられている。とにかく前輪がよく切れるので、想像以上に小回りが効くんです。このあたりはEクラスやSクラスも同様ですが、「車格を感じさせない、取り回しのしやすさ」というメルセデスの特徴をEQCも備えています。

実はテスト期間中、とある駐車場にEQCよりはるかに小さなコンパクトカーを駐車する機会があったのですが、そのときは何度もハンドルを切り返さなければならなかった。ところが同じ場所にEQCを駐車した際は、一発で入れることができたんです。これには驚きましたね。

加えて、360°カメラシステムが標準装備されていますから、余計に車格を意識しなくなります。駐車とか、狭い道を進むとか、多少気を使わなければならない場面でも、本当にストレスを感じません。

それに、エンジンを積んだクルマの場合、MTだろうとATだろうと、シフトチェンジした際に振動があったり、タイミングをはかってシフトやアクセルの操作をしないと動きがギクシャクしてしまったりするもの。でも、モーターで動いているEQCを運転していると、そのあたりの違和感をほとんど感じません。自分の意図した動きと実際のクルマの動きにズレがなく、スイスイと動かせる。速度調整もしやすいので渋滞にハマっても疲れませんし。

── それでは、ワインディングロードを走ったときの印象はいかがでしょう?

別宮 総じて気持ちよく走れますが、いちばん得意なのは高速コーナーですね。緩やかなカーブを描いて、サッと抜けていくようなコーナーは走っていて本当に気持ちいい。

メルセデスのクルマはコーナーを走るとき、ゆったりと車体をロールさせながら、一定のロール角度を保ってスーッと滑らかに抜けていく挙動をするイメージがあるのですが、EQCはその特徴が際立っているように思います。

電気自動車はバッテリーを積む関係上、どうしても重くなります。ただ、EQCは車重が2.5トンもあるのに、それをネガティブな形で意識することがないんです。バッテリーを床下に配していることが安定感を生み、それが乗り心地のよさにも繋がっているのでしょう。

それなりに車重はありますから、連続するタイトコーナーを攻めたり、ブレーキを強めにかけたりすると、重さを感じないわけではありません。ただ、これはあえてそうしているのだろうと私は解釈しています。別の表現をするなら、電子制御に頼り切っていない印象。現代の技術を駆使すれば、そうしたネガティブな要素はいくらか誤魔化すことができるんです。ただ、何でも電子制御で押さえ込んでしまうと、ある一定のラインを越えてしまうような挙動をした際、もうドライバーが制御できなくなってしまう可能性がある。そうならないために「自分はそこそこ重量がありますよ」とクルマ側が教えてくれているように感じます。つまりは、安全に走るための設計思想なのでしょうね。

もっとも、EQCは最高出力が300kw(408馬力)、最大トルクが765N・mと十分すぎるほどのパワーを備えていますから、モタつきを感じるようなことはありません。とりわけ発進時や坂を登るような場面では、パワフルさを痛感します。アクセルペダルを踏めばリニアにトルク感を発揮してくれますし、アクセルを抜けばイメージどおりにスッと減速してくれる。運転していて変なクセをほぼ感じないというか、自然に乗れるクルマだと感じました。

※画像は欧州仕様車です。

── ハイウェイでのロングドライブなど、高速巡航時の印象も教えてください。

別宮 非常になめらかで、安定しています。「電気自動車は長距離走行に向かない」と思い込んでいる人は少なくありませんが、決してそんなことはない。私はEQCに乗って、むしろ電気自動車こそ長距離走行向きだと考えるようになりました。

たしかに、航続距離だけにフォーカスすれば、電池残量が絡んでくるので充電に関する一定の気配りは求められるかもしれません。でも、巡航時のなめらかさ、静けさ、ストレスのなさという点では、電気にかなうパワーユニットはほとんどないとさえ思います。職業柄、いろいろなクルマで長距離を走っていますが、「疲れない」ということでは電気モーターだけで走るクルマはガソリン車よりも優れているのではないでしょうか。

バッテリー ~心配は杞憂に。充電する時間すら楽しさに変わる~

── 先ほど充電に関する言及がありましたが、半年間EQCをテストされて、充電にまつわるストレスなどはありませんでしたか?

別宮 率直に申し上げるなら、捉え方次第だと思います。EQCに乗り始めたばかりのころは「どこに充電スポットがあるだろう」「充電器が空いていなかったらどうしよう」など、私のなかにも懸念はありました。ただ、乗っているうちにそれらはほとんど気にならなくなってしまったんですよね。

『カーグラフィック』のテスト期間中は、家や編集部の駐車場に充電設備を置いて長時間充電を行わず、常に充電スポットで急速充電していました。それでも、充電スポットは全国各地に設置されているので、「そろそろ充電したいな」と思ったときに充電スポットがまったく見つからずに困ったことはありませんでした。

EQCには「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)」が標準装備されているので、「ハイ、メルセデス。充電スポットを探して」と問いかければ、近隣の充電スポットは難なく見つけられます。あと、メルセデスのインターネットサービス「メルセデス・ミー・コネクト」に登録して、スマホアプリを入れておけば、そちらでも充電スポットは簡単に検索可能です。私はスマホアプリで充電スポットを探して、ドライブの計画を練ることが多かったですね。

MBUXでは「いまの走り方でいくと、このあたりまで電池が保つ」とか、「目的地に到着したとき、充電残量はこのくらい」といった概算データも表示してくれるので、とても便利でした。

EQCは電池残量が25%くらいで80~100km程度は走りますから、そこから充電スポットを探しても十分間に合います。それに街乗り中心で1日に10数kmくらい走る程度なら、充電スポットで1回30分の充電を行ってしまえば1週間くらいは保ちます。そうしたことが理解できてからは、充電に関する心配もほとんど抱かなくなりました。

長距離を走る場合も、事前に「この充電スポットで休憩しよう」「ここが使えなかった場合は、こちらにある充電スポットを使おう」と計画しておくようにすれば問題ありません。それどころか、充電することが楽しみにすらなってくるんです。「この充電スポットがある公園は景色がよさそうだな」とか、「この道の駅の近くに、こんな観光スポットがあるのか。充電しているあいだに散歩がてら行ってみよう」とか、「このサービスエリアで充電するあいだにお土産を買おう。特産品は何かな」なんて具合に、充電時間を単なる待ち時間ではなく、観光や買い物を楽しむための時間として活用できるようになると、充電すること自体が楽しくなってくる。ひいてはそれが心の余裕となり、疲労感の軽減にもつながります。

もちろん、クルマのなかで待機しながら音楽やテレビを楽しんだり、読書したり、ノートパソコンを開いて作業したりしてもいい。充電というインターバルが置かれることで、むしろ時間を有効活用できるようになると感じました。

もっと言ってしまうと、私はEQCに乗ってから、スマホやノートパソコンといった充電が関わるもの全般について、価値観が変わったように感じます。以前は、隙あらばスマホの充電をして、いつも満充電に近い状態にしておかないと不安を覚えるような性格だったんです。ところがEQCに乗ってからは、残量を過度に意識してしまうことが、どれだけストレスになっているかに気づかされた。必要十分な量があれば問題ない。慌てなくても大丈夫……そんな、ゆとりある考え方ができるようになりました。

── EQCのテスト期間中、「バッテリーが切れたらどうしよう」と不安に感じることはなかったのですね?

別宮 一度もなかったです。EQCは満充電の状態で、カタログ値だと400km、実走行でも300kmくらいは走ります。また、しばらく乗っていれば「自分の運転スタイルだと、このバッテリー残量でだいたい何kmくらい走れるだろう」ということが経験的にわかってくるので、たとえば「この週末に予定している長距離ドライブでは、このあたりで休憩がてら充電すればいいな」なんて考え方が自然にできるようになるはず。私が先ほど言った「捉え方次第」というのは、そういう意味なんです。

※画像は欧州仕様車です。

乗り心地 ~ストレスから解放され、“自然”を感じながら走る喜び~

── 話題をEQCの「乗り心地」や「快適性」に移したいのですが、どのような印象を持たれましたか?

別宮 真っ先に挙げるとすれば、静粛性ですね。「電気自動車はエンジンを積んだクルマに比べて、静かである」というのは一般的に言われていることですが、そのなかでもEQCはずば抜けて静粛性が高いと感じます。タイヤが路面に接している以上、ロードノイズは発生しますが、室内ではあまり感じさせないレベルで抑えられている。風切り音も同様で、ほとんど意識しません。室内が静かなので、会話が非常にラク。高速道路を走っていても、後席に座っている人と普段どおりの声量で話ができるんですよ。雑音が入ってこないので、音楽を楽しむ環境としても良質です。

また、エンジンを積んでいないということは、窓を開けて走ったときに自分のクルマのエンジン駆動音や振動音に悩まされたり、自車の排出ガスのにおいに気を取られたりすることもない、ということ。私はEQCに乗って自然の多い場所を走ったりすると、積極的に窓を開けるようになりました。

ドライブしながら木々のざわめきや小鳥の鳴き声に耳を傾けたり、海の波音を楽しんだりといったことが堪能できるのは、とても心豊かな時間だと思いましたね。サンルーフから入ってくる太陽の光、開け放った窓から入ってくる風や木々のにおい。それらに癒されながら、自然のなかをスーッと静かに走っていく。これまであまり意識することがなかった四季の移ろいを感じつつ、散歩を楽しんでいるような感覚というか。乗っているだけでストレスから解放されるようでした。合わせて、環境への配慮といった、これからの時代にハンドルを握る者がぜひ持っておきたい「自覚」みたいなものまで抱くようになりました。

「走り」に関するパートでも言及しましたが、EQCに乗っていると疲れやストレスをほとんど感じないんです。ずっと乗っていられるし、運転している時間を純粋に楽しめる。その結果、目的地に着いたときにほとんど疲れていないんです。

たとえば、温泉地に出かけて、行きの運転の疲れを温泉でせっかく癒したのに、帰りの運転でまた疲れてしまい、帰宅したときには疲労困憊……なんてことがあります。キャンプに出かけても、目的地に着いてテントなどを用意しなきゃいけないのに、道中の運転で疲れているからなかなか準備がはかどらなかったりする。EQCでドライブすると、目的地に到着したときに元気いっぱいなので、現地で過ごす時間がより有意義になると思います。

室内空間は一般的なSUVと同様なので、荷物もたくさん積めますし、シートにもゆったりと腰掛けることができます。EQCは走りの質感や安全性、室内のユーティリティ性など、全体的な仕上がりがガソリン車の他のメルセデスのモデルと同じく、高い水準でパッケージングされていると感じますね。

コスト ~メルセデス独自のサービスを活用することで、高い経済性を発揮~

── 購入時の補助金やランニングコストなど、経済性についてはどんな感想をお持ちでしょう。

別宮 EQCはエコカー減税対象モデルなので、税負担を軽減できた分は日々の充電などランニングコストにまわせる、と捉えてもいいでしょう。ただ、補助金や免税措置などは時期によって、地域によって状勢も変わってくることなので、気になることがあれば購入時にディーラーの担当者に相談してみてください。

経済性に関連した話題でいうと、メルセデスが提供している充電サービス「Mercedes me Charge」はぜひ注目しておきたいところ。EQCのユーザーは納車から1年間、対応する充電スポットでの急速充電費用、そして5750円の月会費が無料になります。『カーグラフィック』のテスト期間中もこのサービスを活用したので、対応していない急速充電器を2回利用した際に発生した1000円の充電料金以外、電気代はかかりませんでした。購入から1年くらいは目新しさも手伝って走行距離も伸びるでしょうから、この無料特典のメリットは大きいと思います。

連載記事のなかで、テスト期間中のすべての充電費用と「Mercedes me Charge」の月会費を負担した場合の金額を算出したところ、走行距離1kmあたり8.4円のコストがかかったことがわかりました。そこから誌面では、車格がほぼ同じMercedes-AMG GLC43(ハイパフォーマンスモデル)やGLC 220d(ディーゼルモデル)とのランニングコスト比較をしたのですが、前者は1kmあたり13.5円、後者は同じく7.3円という金額になりました。あくまで私の手元で行った試算なので参考値ですが、EQCのランニングコストは経済性が高いといわれるディーゼル車と比べても、それほど遜色のない水準であるといってよいでしょう。ちなみにこのEQCの数値は急速充電器のみで運用した場合のコストですから、自宅や商業施設にある普通充電器を使って充電すれば、さらにコストダウンが望めます。

走行性能、乗り心地、ユーティリティ性、経済性など、EQCはあらゆる側面において抜かりがなく、とても端正に仕立てられた、メルセデスらしい電気自動車だといえます。初めて電気自動車の所有を検討するのであれば、EQCは間違いなくトップレベルの候補としておすすめできる、非常に魅力的なモデルではないでしょうか。

words: Naoyuki Urushibara
photo: Satoshi Mizusu